第二回:

『BDシャツが出来るまで。』

Interview with DAIKI SUZUKI
Text by AKIO HASEGAWA
Illustration by NAIJEL GRAPH

これが19世紀シャツ! 様々な改良を経て現在のシルエット、ディテールに至る。EGを代表するアイテムであり、大器さんの自信作。
長谷川昭雄(以下H): ネペンテスのアイテムは割とベーシックですよね。ベーシックなものを元に、色々とこだわったディティールを持ったものへと仕上げているアイテムが多いと思うんです。その中でも、よりベーシックなものということでボタンダウン(以下BD)シャツを取り上げてみたのですが。
鈴木大器(以下D):一番最初に作ったのがBDシャツだったね。まだサンフランシスコいたころに始まったから。そのころはENGINEERED GARMENTSの構想も全くないころで。オーダーメイドのカスタムメイドのシャツを作る良い工場がニュージャージーにあって、そこを知り合いのデザイナーとかが使ってたんだけど。ある時連絡があって、潰れそうだと。「助けてくれ、なんか作ってくれ、仕事がなくて困ってる」ってことだったので、ああそうか、じゃあ頼もうかと。

工場の人に、何か古いシャツがあったらそれを今の時代に合わせて作り直して作ってみたいんだって話したら、その人が
「19世紀に作られたシャツがあるよ、見に来れば?」というので、見に行ってみたのが最初のきっかけだったね。
H: へえ。そんなきっかけで始まったんですね。
D: そのシャツは、バンドカラーで所謂プルオーバーで。俺も清水さんもその手のやつを色々アレンジしてやってたと思うんだけど。古いシャツのバンドカラーってほら、バンドカラーだけど本当言うとデチャッタブルカラーって言って、あれに固い付け襟を付けるやつが多いんだけど。そういう古い本当にシャツがあって。面白いなと思ったけど、それをそのままやると凄い着づらくて。フィットとか今の時代には全く合わないもんだったから。ディティールだけ少しアレンジして、自分たちが一番馴染みがあるのがBDのシャツだったんで、BDに置き換えて作ろうということで最初サンプルを作ってもらったんだよね。
H: ふうん。
D: それがあがってきてなんとか試行錯誤っていうか修正を加えて、まあこれでいいんじゃないっていうのを
「NEPENTHES NEW YORK」ってレーベルで作ったのが最初かな。だからEGとかの前に、その「NEPENTHES NEW YORK」っていうレーベルが最初あったんだな。
青柳徳郎(以下T): その時期はまだ、そういうオリジナルブランドとかあんまりうちでやってないときでね。ほとんどがまだインポート物の時代だったんだけど。
H: へえ。なるほど。
D: でもほら、一度92年くらいに「OPUS」ってラインをやってみたり、その後ジーンズだけとか、軍パンもやったかな。なんかそういう単品のオリジナルみたいなのはやってたよね。だから今考えれば、このBDシャツが生まれたのも、その流れだったんだな。その頃だから、「NEPCO」のアイテムとか。そういう単品のオリジナルアイテム。要するに、ブランドを作るんじゃなくて、ここではこういうシャツ作れるな、じゃあそれにはうちのレーベルを付けよう、みたいな感じのやり方をやってたんだよね。これもその流れで、たまたまアメリカのオフィスがサンフランシスコからニューヨークに戻ると、それにはニューヨークにお店を出すっていう前提があって(※旧NEPENTHES NEW YORK)、その店で扱う商品にはお店のオリジナルのレーベルを付けたい、ということで始まったのが、このBDシャツ。徳郎もNYに来た頃で。
T: そうそうそう。
「NEPENTHES NEW YORK」レーベル時代の19thシャツ。この時代は身幅も超デカかったとか。
H: へえー。その当時のものと、今定番でお店で展開しているBDシャツで、形はどういうふうに違うんですか?
D: かなり変わったね。ディティール的にはほぼ一緒なのね。BDで。フロントは昔のブルックス(ブルックス・ブラザーズ)みたいにこうラウンドしているやり方。一番変わったのはフィットだね。
H: うーん。もっと太かったんですか。
D: そうだね。もちろん幅がもっとあって袖も太くて、丈も長くてって感じかな。前はだって、ここのとまりからこっからボトムがこのくらいあったから。
H: ほとんど空いてるような。それはやっぱり、19世紀のシャツのモチーフが残ってたんですね。
19thシャツの最も目立った特徴が、このサイドの深いスリット。裾を出したときにカッコいい。
D: そうそう。それが良いと思ったんだけどね。徐々に短くしていった。なんでかっていうと、その頃ちょうどシャツの裾を出して着るのが良い感じになってきた時だったんで。
前から見るとこんな感じ。裾の前の部分の合わせ方が面白い。
T: あと、このシャツの面白さは、作ってるのがカスタムシャツ屋さんだけに、例えばシングルニードルつまり1本針で全部縫ってたりするのだけど、そういう手間のかかったドレスシャツを、カジュアルな生地で洗いざらしで提案したというところですよね。
D: そうそう。19世紀のシャツを見てなんか面白いなと思ったのが、生地幅に影響された作り方。そのシャツが作られたのは、生地の幅がすごく狭かった時代。昔のシャツを見ると、身ごろでもたまに生地幅が足りなくて、背中で継いでるのがあるのだけど、これは袖。
H: 曲がってるんですか?
D: いや、袖がね。なんていうか、生地の上にこう向かい合わせにパターンを置いて、生地を切りたいんだけど、生地幅が狭くてアームホールの一部が入りきらないんだよね。それやるために別にパーツを取るの。そうすると生地の取り都合がよくなって、生地代をセーブできるっていうアイディアで。それがこれなんだよね。
これが、取り都合の結果で生まれた脇下のカッティング。まるで機能を追求しているようで、そうではないのが面白い。
H: そういうことなんですか!?脇の下のガセットは、生地の取り都合の問題?これは機能とかではなくて?
D: 全くないね(笑)。機能的にはたぶん、ちゃんと1枚で取ったほうが工程が少なくて、もちろん縫い目が少ないほうがごわごわしなくて良い。良いんだろうけど。これは生地幅が狭いから、仕方なく生地の取り都合の為に生まれた仕様だね。そういうところが、あぁ古いシャツらしくて面白いな〜と思った。
H: ふーん。
D: そのシャツを見てたら、やっぱり手の込んだ1本針で作ってる感じも分かったり、そのアームホールのガセットのディティールも見つけて。あと袖口のギャザーも良かったね。当時はプリーツなんかの感覚がなくて、ほとんどギャザーだったから。それはブルックスのもそうなんだけど。そういうのがすごい面白いなと思った。そこから、こういうディティールを所謂ブルックスの昔から知ってるBDの形に入れ込んじゃおう、っていうのが凄く面白いんじゃないかなと思った。
「WORKADAY」レーベルだけで、こんなにカラーバリエーションがあったなんて知らなかった。ちなみにディテールはEGと同様。うーん、どの色も欲しい。
一枚選ぶなら、ブルーのキャンディストライプ。便利だから持っておいた方が良いと思う。各¥23,100〜25,200。
H: ふーん。なるほど。
D: ボタンダウンって、一番ベーシックなシャツじゃない?俺らの中で。ベーシックで、どちらかと言うとデザインの要素が入り込む余地があまりない。やるとしても、ポケットにフラップを付けるくらいの感じで。そういう凄く見た目はシンプル然とした形に、何かおおよそ考えうる限りのディティールを全部入れちゃおうと思ったの。だから、やっぱりシングルニードルで作り、袖も2枚袖にして、カラーのステッチもジグザグに入れて、バックヨークもスプレッドにして。ギャザーの付いたカフ周りには、ケンボロが付いてて。あと、脇下のガセット。そういった昔のカスタムシャツ屋が工夫して作り上げたドレスシャツのディティールを全部入れ込んで作ってみたんだ。そういうものが好きだったからね。

これが襟裏のディテール。ジグザグに縫ってあるのがわかる。

袖口のギャザーとケンボロ。ケンボロの処理でシャツの品質がわかるとも
言われている需要なディテールである。

後ろから。台襟に見えるジグザグのステッチングとアメリカらしい高めの位置
で切り替えたショルダー。バックヨークもスプレッドに。

ネクタイを締めたときに収まりの美しい襟。
しない時でも美しくロールしている。

D: それらは全てドレスシャツのためのディティールで、タイを絞めたりフォーマルな格好ためのもの。そういう作りのシャツに、シャンブレーとかデニムとかさ、花柄のプリントとか、とんでもなくカジュアルな生地を当て込んで、しかもそれを洗ってしまうと。
H: ふんふんふんふんふん。
大器さんのイラスト画。ウマい!以前、ニューヨークオフィスに訪れたとき、イラスト画を描いていた大器さんは、近づきがたいおっかないオーラを放っていた。というコトを思い出したりして。。。
D: 本来の意味合いから言うと、カジュアルな着方においては、そういうドレスシャツの手の込んだ作りとかディティールって一切必要ないじゃん。必要ないんだけど、すっごく贅沢にお金をかけて手の込んだ細工をして、しかもそれを台無しにしちゃうっていう。それが何かうちの会社的な意味合いでいくと、どっちかっていったら粋な感じがする。
H: ああ、なるほどですね。うーん。
D: そこら辺のニュアンスは本当に分かりにくいと思うんだけど。俺はそういうのがかっこいいなと感じるのね。全く必要のないことに凄くお金をかけて、それを使わないみたいな。そういう変なぜいたく感があるのよ。アホみたいな感じだけど(笑)。
H: あははは(笑)、でもなんかそういうのがあるからこそ洗ったときになんか出るんですよね?きっとなんか。何もディティールがなかったらきっと。
D: 出てほしいと思ってるけど。どうだろうね。でも、たいがいの人はこの価値観の部分は特に全く分からないと思うよ(笑)。でもね、分かってなくていいんだよ。俺前から言ってるけど、作り手のなんかそういう変な部分って、ああ!こういうのしゃべっちゃいけないんだけどほんとはね(笑)。
H: ははは(笑)
D: 作り手の考えなんて分からなくていいんだよね。分かられると逆に、こっちが「あら?分かられちゃった」みたいな。ちょっと悔しい感じがする。分かられないくらいでいる方がまたかっこいいなという。
H: なるほど。
D: なんか、すんごい馬鹿みたいな。ただ、俺はよくこう思うんだけど、うちの洋服EGもそうだけど。多分ネペンテスとか清水さんも同じなんだけど。見た目普通なんだけど、そのバックグラウンドはもの凄くコンセプチュアル。実は。でも、普通に外から見てるだけでは、それは絶対見えないし。
H: あえて言うこともない。
D: そう、言わないから誰にも伝わってないし(笑)。伝わる必要はないんだけどね。さっきも言ったように、それが見えちゃうと逆にかっこ悪いんだよね。
H: そうですよね。
T: 説明過多になっちゃうとね、ダサくなってしまいがちだよね。さっきの、手のかかったものを台無しにしちゃう、っていうと語弊があるかもしれないけど、高級なものなんて特にブランドもののバッグでも何でもそうだけど、大事にし過ぎて持ちこなせないとかっこ悪いじゃない?どんな洋服でも洋服に着られちゃうんじゃなくて、それを着こなすっていう感覚かなと。
D: 昔から洋服屋にいると、大概なんかそういう経験をするんだよね。シェットランドセーターを洗って着るとか、スタンスミス(アディダス)を洗濯機で洗って乾燥機で乾かす、みたいなことをやってたからね。大事にしない方がかっこよかった例もいっぱいあった。長く洋服屋とかやってると、その間にいろんなことがあって。そういう事の積み重ねが、物を作る時に多分出るんだろうね。
H: きっとそうですよね。
D: 穴の開いたジーパンとかもそうだよね。ボロいジーパンとかもそうだよね。どっちかっていうと。今どきなんて、ボロボロの加工がされたジーパンを何万円もかけて買ったりするわけじゃない。あれに近い感じだと思うよ。
H: まあそうですよね。あれはそういう価値観を分かりやすくしたものってことなんですね。
T: うん。傷まないように着てる、みたいのが見えちゃうのってあんまりかっこよくないじゃない。
H: 嫌ですよね。
D: でも、ボロボロに加工した5万円のジーパンを大事に大事に、クリーニングに出してたりする人もいるのかもな。でも、それだとちょっと本末転倒の気がする。
H: 本当ですよね。
T: 物を大事に使うのはもちろん悪くはないとは思うけど。革靴とかきちんと磨いて、大切に履くとか。
D: そうそう。すごい良いものを大事にする人いるじゃん。そういう人はそれで素晴らしいと思うよね。友達にも、ウエストンの靴を雪降ったら抱えて裸足で歩いたやつがいたし。
H: へえー(笑)
D: だけど俺はそういうことはできない。でも、なんか多分違う意味での、俺が出来るかっこよさがあると思う。元々ずぼらだしさ、全然物に手をかけないし。ある意味屁理屈なんだけどね(笑)。
H: やっぱり靴は磨かない?
D: いや、磨くよ!いや、磨くっていうか。拭いたりするよ。出掛けるとき出して、ちょっとこれすごいなっと思って、クロスでちょっと拭いたりはするけど。ああいうなんか、ブラシとかで磨いたことは多分ないね。ケアしないからボロくなるの早いじゃない?だからってそれを綺麗にしようってよりも、新しいの買おうと思うんだよね。
H: ああ。アメリカ的ですね。
D: 違うもの買おうと思う。その靴はそのままボロいほうがかっこいいなって、また屁理屈が始まって、そのままずーっとなっちゃうんだ。同じ靴でもだからボロいのとまだきれいなのとあったりとかする。磨いたことはないなあ。
T: スタイルの違いで。ちょっとほら、なんて言うか日本で言うとバンカラ的な美学とかさ。そういうのと、考え方としては近いのかもしれないけど。
H: それはそういう日本的な美学なるんですかね。
D: いやぁ、それはこないだもどっかのインタビューで聞かれてさ。それはイギリス人のインタビューだったんだけど。アメリカ人よりもアメリカの洋服を作れる、その裏返しには日本の文化があって、あなたのそういう面白いツイストした感覚は、日本の侘び寂びからきてるんじゃないか?って言われたんだよ(笑)。
T: ワビサビ(笑)!
H: いやでも、そうですよね(笑)。
D: でも、聞かれて俺は「それは絶対違う!」って言ったんだけど(笑笑)。だって、俺は日本の侘び寂びの文化もそんなに良いと思ったことはなくて、もう若い頃は自分の体以外は着てる物は全部アメリカ製で、それは全然不可能だったけど出来れば体も顔も全部アメリカ製になりたい!と思ってたくらいだからね(笑)。
H: あははは(笑)そうなんですね(笑)!

●  洋服とその時代性

H:(資料を見ながら)色んなケースがあると思うんですけど。例えば何かこういう本や資料を見ていて面白いものを見つけて、そこからデザインに繋げる場合ってどうしてるんですか?掲載されている写真を見るだけだと、写っている一方向からしか見えないじゃないですか。見えない部分は、また違うディティールと組み合わせながら自分なりにデザインしていくんですか。
いろんな参考資料。勉強家。いや、博士の域ですね。
D: そうだね。昔のシェアーズのカタログとかジェントリーとか見てると、色々面白いデザインが出てるじゃない。でも内側や背面が写ってない。なので、そういう部分はやっぱり想像して作るんだよね。オリジナルとは関係なく、これだったら背面はこうなってる方がかっこいいじゃん、みたいな。
H: なるほど。
D: 要するに勝手に作り上げるんだけど。後になって、その実物と出会うことがあるんだよね。
H: へえー。
D: おっ!これは写真で見てたやつだ!と思って、パッと後ろ見るじゃん。自分で想像しながら作った部分を。それが全然違ってる場合と、全く同じだった場合がある。
男性C: へえー。そういうものなんですね。
D: 凄く面白いなと思って。色々想像して作ったのに、オリジナルも一緒じゃんって(笑)。
H: やっぱり色んなものを見ていくと、大体こういうものはこういうふうになってるとか、何となく想像できるようになってくるってことですか。
D: うん。アメリカの洋服を時代で見てると、何か1つどこかが凄く良い物を作るのね。そして、後から全部それがコピーされていくの。あるアイテムが時代によって一様に同じディティールだったり、それを簡素化した物だったり。あるいは逆に、一歩踏み出してちょっと工夫してたりする物もあるのだけど、大元は1つだったりするんだよね。
H: そういう、洋服の時代性みたいなもの、40年代だったらこういう感じ、50年代はこういう感じとか、色々あると思うんですけど。そういう物にきちんと沿ってみたり、あえてバラバラに組み合わせてみたり、様々考える訳ですよね?
D: 凄くよく考える。時代性ということでいえば、10年代〜20年代とかは凄くテーラード。今みたいにジーパンとかTシャツなんか存在してない時代だから、スポーツウェアの分野でも例えばスポーツコートみたいなものがあったり、ワークウエアでさえも凄くテーラード。そんな時代が10年代〜20年代。そこから30年代くらいまではその流れが主流だったんだけど、40年代くらいからは、レジャーウエアっていうか今でいうカジュアルなスタイルが少しずつ出てきて、それがどんどん進化していく。凝った作りとか工夫されたディティールも、そのままどんどん進化して40年代50年代くらいまでくるんだけど、50年代を通り過ぎるとそれがどんどん劣化してくんだよね。
H: ふーん。
D: 超劣化しまくったのが70年代。
H: ああ。
D: もう劣化しまくって簡素化して大量生産になり、何百回洗ってもへこたれない生地としてポリエステルが主流になって、みたいな。洋服を追っかけていくと面白いことになんか時代が見えてくるんだよね。俺はもともと歴史好きだったせいもあって、凄くはまったっていうかね。
H: なるほど。
D: 19世紀くらいまでは、洋服ってものは全部カスタムで1つ1つ職人が作ってた
ものだったのね。10年代20年代くらいになって、それが少しずつ商業ベースに乗り
始めるんだけど、やっぱりガッチガチのテーラードなんだよね。職人技とか凝った
ディティールも、30年代くらいまでは本当に出放題なの。だから、良い物がある時代にすごい集中していて見ててすぐ分かる。ああ、これは20年代から30年代ぐらいのものだなっていう。
でも、やっぱり転換のきっかけは戦争だね。40年代は戦争じゃん。物資も不足になって人も少なくなって、戦争終わってからは全部手抜き。どんだけ簡素化していっぱい作って儲けるかという方向に、どんどん転がり落ちてくんだよね。あれが本当に見てて面白い。

H: 面白いですね。大器さんにとって好きな時代の服っていうのは、どのくらいの時代のものなんですか?
D: 色々あるのだけど、テーラードに関してはやっぱり10年代とか本当に古い物のほうが面白い。でも、すごいなんかまとまったジェントルマンスタイルだとやっぱり30年代がすごい好きだし。そうだね、凝ったワークウエアとかも出てきた20年代から40年代くらいまでの間が、やっぱり一番凄く綺麗で工夫されていて、物作りの面からも面白味のある物が多かったと思うよ。
H: うんうん。

D: でも、カジュアルっていう点で、遊び着は本当にフィフティーズがまた面白いんだよ。
H: ああ。なるほど。
D: 60年代はどっちかっていうと、そういうカジュアルなものがすごい完成された時代だ
と思う。俺はね、普段着てるものは多分60年代が一番近い雰囲気だと思うんだよね。
H: うんうん。
D: 70年代はすべてが終わり
H: ふーん。
D: その70年代もちょっと奇抜な面白さがあって。
俺はあんまり得意じゃないんだけど、清水さんはその辺りが大好きだよ(笑)。
H: ああ!
D: 清水さんの、あの70年代のいやらしい感じのところを凄く上手くやるのが、
俺は大好きなんだよね。あれはもう、清水さんの真骨頂だよね。あの辺を出来る人は他にいない。
H: そうですよね〜。いないですよね。
D: 俺みたいな感じで、アメリカの洋服について長く見てきて、それについてしゃべれる人は結構いるんだよ。この辺りのことは、トラッド上がりでがっちり洋服を好きでやってきた人は皆、 ある程度分かってる。俺以上にできる人なんていっぱいいるんだけどさ。でも、そういうタイプの人からしても、あの清水さんの世界は独特でさ。 アメリカのあの時代のかっこよさを、あそこまで表現できる人はあまりいないと思う。
終わり。

●  登場人物

1. 長谷川昭雄
1975年生まれ。フリーランス スタイリスト・ファッションエディター。
20歳の時に喜多尾祥之氏に師事。その後、『POPEYE』にてライター修行の
後、スタイリストとして独立。『MONOCLE』(英) には創刊から携わり、そのファッションページの基礎を構築。現在、ポパイ ファションディレクター。

2. 鈴木大器
NEPENTHES AMERICA INC.代表「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。 1962年生まれ。青森県弘前市出身。前に勤めていた会社で清水慶三氏と出会い「ネペ ンテス」設立に参画。89年渡米。ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再 びNYにオフィスを構える。 09年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日 本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。趣味はサーフィン。一年の ほとんどを短パンで過ごしている。

次回は、第3回「清水さんとハソーンとホワイツ。」です。

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